大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)2778号 判決

被告人 中村栄治

〔抄 録〕

原判決の判示する犯罪事実の要旨は「被告人は昭和三十年三月十八日午後十一時三十分頃杉村章と飲酒の上、茨城県猿島郡岩井町字本町飲食店鈴木鉄治方の雨戸を蹴り、木戸を破壊し或は通行人に暴力を振うなどして同所附近を徘徊していたので、所轄警察署巡査長山篤が急報に接して同所に私服で至り(被告人等を)逮捕すべくその後を二、三米付いて行くや同巡査を手拳で殴り、交互に竹箒を以て殴る等の暴行をなし以て右巡査の公務の執行を妨害した外、右巡査に対して全治迄約十日を要する前頭部裂創、小指切創等を与えたもの」というのである。而して右事実に対して原審は刑法第九十五条と同法第二百四条の罪を認めこの両者を併合罪として処断している。しかし公務執行妨害、傷害といつた事案に於ては、傷害の結果が公務執行妨害の所為とは別個の動機、原因によつて生じた場合は格別、通例この両者は一個の行為にして二個の罪名に該るものといわなければならない。本件に於て、長山巡査の原判示傷害が、被告人の公務執行妨害行為とは別個の動機原因によつて生じたことを疑わしめる証拠は記録上見当らない。原判決がことさらに長山巡査の公務の執行を妨害した外云々と判示したのは、もしそれが公務執行妨害の行為の外に別個の原因によつて同巡査に原判示の傷害を与えた趣旨とすれば、事実を誤認したとの非難は免れないし、そうでないとすれば本来一所為数罪に触れる場合として刑法第五十四条第一項前段を適用すべきに拘らず、併合罪の関係にあるとして刑法第四十五条前段第四十七条第十条を適用し重い刑法第二百四条の罪の刑に加重して処断しているのは法律の適用を誤つて被告人に不利益な結果を生じたものである。右の如き事実の誤認又は法律適用の誤は判決に影響を及ぼすこと明らかなものといわなければならず、原判決はいずれにせよ破棄を免れない。

(近藤 吉田作 山岸)

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